バクタプール県は、首都カトマンズから13km東南に位置する。16ケ村で構成され、事業地のチャングナラヤン村は北部に位置する。バクタプール県は人口約18万6377人、119平方kmの大きさである。





チャングナラヤン村の人口5297人である。村の住民の平均月収は約400〜1000ルピー(約600〜1500円)で、ほとんどの住民は農業とレンガ作りで生計を立てている。地域には150ものレンガ工場が存在し、丘の上からはレンガ作りのための煙を多く見ることができる。チャングナラヤンでは、人口の84%が教育を受けていなかった。収入の86%は男性が稼いでおり、女性は、綿を紡ぎながら家事をし、収入の16%を稼ぐ。チャングナラヤン村には学校が3つあるが、教師と教材が不足している。存在する教師も、教材がないため教育内容のレベルが下がっている。


農業とレンガ作りで生計を立てる他、頭に荷物を乗せて運び、収入を得る住民もいる。料金は距離と重さにもよるが、50kgの荷物を2km運び300ルピー稼ぐ。しかし、年配の人々にとっては大変な重労働となり、体への負担が大きい。現地の地酒を作り、1リットル20ルピーで売る人もいる。


平成13年度に外務省の支援で建設されたラーニングセンターは、地域の多目的会館として利用され、また現在、女性団体や青年団へのトレーニングを11項目実施している。今回の事業では、机や椅子などの資機材の供給のほか、教材配付、飲料水施設の建設を実施した。

チャングナラヤン村の女性が建設用の砂利を頭に乗せ、現場まで運ぶ。




後のメンテナンスのことも考慮し、砂利は近くのバクタプール県のものを利用した。

 




この貯水タンクから、チャングナラヤン村とチャーリン村へ水を引く。標高約1600メートルの地点に建設され、1550メートル地点にあるラーニングセンターまで水を引く。

業者とICAとエンジニアが定期的に打ち合わせを実施し、情報交換を頻繁に行った。



7月21日、貯水タンクのふたを残し、完成した。



ICAスタッフ佐藤が沸き水を飲んでみる。とても冷たく、味はほのかに甘い。ミネラルを豊富に含んだ自然の天然水である。




ジャングルにある湧き水を貯めるタンクにセメントを流し込み、7〜10日間乾燥させる。




通りかかった農民に聞いたところ、この時期は農繁期で忙しく、事業には参加出来ないとの事だった。

 



7〜8月は雨期のため、建設現場までの道は泥水でぬかるみ、森の中はコケで滑る状態であった。建設現場までの材料の運搬は、道に慣れている地域住民でも危険であった。



事業を通して、現場に滞在していた建設業者。彼は毎日、地域住民からの質問に答えるなどして協力してくれた。




インタンクと呼ばれる沸き水をろ過するタンクも設置した。




経費を節約するため、地域住民と会議を重ねたところ、彼等は60,000ルピ分の労働力を寄与してくれることになった。



溝堀りに協力してくれた住民たち。



事業の建設において、住民に役割を与えることで、施設に対しての責任感が出てくる効果がある。



エンジニアが住民の掘った溝の深さを計測している。本来は90センチの深さが必要であるが、ジャングルの中では木の根や石があり、困難な場所もあった。




水はとても貴重な資源であることから、蛇口設置の際に衝突が起きることが考えられた。そのため、関係者全員で蛇口設置の場所を話し合った。チャングナラヤン水管理委員会、センターのスタッフ、ICA日本スタッフ、ICAネパールスタッフ、エンジニアと建設業者を集めて契約書を書いた。




水を提供する蛇口である。1基の蛇口は周辺の5〜8家族に水を提供することが出来る。計画予定の1200名の住民に水を提供することは出来なかったが、登録した水の利用者約500名に毎月15〜20ルピーを支払ってもらい、そのお金は以後のメンテナンス代として利用される。

 




8月中旬のインタンクの様子。90%完成した。インタンクの周辺には、水源が2〜3箇所、存在した。将来、地域から出る資金でパイプを拡張する際は、周辺の水源から水を引くことが可能となる。



8月下旬の貯水タンクの様子。水を1週間ほど溜めて、漏れがないか確認した。通常は、40年以上もつと言われている。



8月下旬の提供用タンクの様子。エンジニアがタンクの大きさ、容量などを慎重にはかっている。このタンクにも水もれは発見されなかった。

 



日本から理事長の佐藤静代と副理事長のウェイン・エルスワーズがトレーニングのために訪問した際、飲料水建設施設を視察した。



完成した蛇口。合計20基がチャングナラヤン村とチャーリン村に設置された。これで、1日1時間以上かけていた水汲みの時間が減り、井戸の水ではなく綺麗な湧き水を利用することができる。

 



ラーニングセンターでは、地域の女性達が周辺に花を植えたり、掃除をしたりするなど、センターを大切にしようという行動が見られた。



ラ−ニングセンターへ資機材を提供した。より有効的に、多くの住民に技術訓練を実施する目的で与えられた。外務省NGO大使の五月女氏から直接、センタースタッフへ資機材が渡された。

 



今までに述べ1,200人がネパール国内から、トレーニングを受けにチャングナラヤンのラ−ニングセンターを訪れている。現在は、技術訓練センターとしての利用だけではなく、宿泊施設や小さなカフェとしても機能している。

 



ICAネパールが実施したトレーニングの集合写真。

7月21日、ラ−ニングセンターにて事業の持続についての会議を実施した。ICAからドゥルガ氏と佐藤、村の管理スタッフからスレンドラ氏とデバカ氏、エンジニアのシヴァ氏、カトマンズでレストラン経営のダンゴ氏が参加した。全く違う意見を交換することで、センターの最適な収入向上活動を実施することが出来る。



7月21日〜25日、ICAネパール事務所にて、5日間のトレーナーを対象にしたセミナーを開催した。参加者は、バクタプール県から13名が参加した。

 

ICA手法トレーニングのマニュアルの一部である。『独立した強い地域の育成』『トレーナーのトレーニング(T. O. T)』『グループファシリテ−ション手法』『人的摩擦の管理』など。世界35カ国のICAが同じカリキュラムを利用している。

ICAネパールのトレーニングマネージャーのタトゥワ氏。現在では、JICAネパールの現地スタッフやUNDPネパールスタッフにもICA手法を取り入れたトレーニングを実施し、活躍している。

 



ファシリテーション手法のトレーニングの様子である。日本では、まだファシリテーション技術というのは普及していないが、アメリカやネパールでは大手企業や政府関係者までもファシリテーターとしての技術を学ぼうとしている。



「有効的なチームワークを作るには?」という質問に対しての参加者の回答を貼った。ネパールの文化や風習が反映された興味深い答えがあった。ICAトレーニングを学んだ人が、政府関係の仕事を定年退職し、ICAネパールのトレーナーとして活躍しているスタッフも多い。

 



チャングナラヤン女性組合のメンバーが作成した品々。3年前から継続して実施されている洋裁、裁縫、編み物の技術は格段に向上した。9月からは多くの観光客が訪れるため、観光客相手の土産物を作っていた。



編み物トレーニングの先生マヤさん。彼女はチャングナラヤン村の住民であり、週に2日ラ−ニングセンターで、女性達を集め編み物を教えている。

 

洋裁、裁縫、編み物商品の収入の20〜40%が、ラ−ニングセンターのメンテナンス費となる。その他、毛糸や布の購入、消耗品の裁縫道具の購入費として充てられている。

2週間に一度実施されるマイクロ・クレジットの様子。最低額5ルピー(約7.5円)から貯蓄が可能となり、必要になったときに借りるといった所謂『信用組合』の原形である。現在、チャングナラヤン、チャ−リン村の約164名が参加している。

 

8月24〜26日まで実施された『持続する有機農業トレーニング』の様子である。ネパール西部に位置するルパンデヒ県デヴダハ地域から15名が参加した。バスで約8時間かけトレーニングを受けにきた。

 

植物や野菜、動物の糞を使った有機肥料、唐辛子栽培のトレーニングを実施した。参加者はトレーニングの間、ラ−ニングセンターに宿泊した。

日本からトレーナーとして、理事長の佐藤静代と副理事長のウェイン・エルスワーズがラーニングセンターを訪れた。能力向上のトレーニングを受けたがっていた地域住民は熱く歓迎した。

 

チャングナラヤン事業を通して、心に残った活動を参加者全員で考えた。

経済的開発、社会的開発と文化的開発の視点から今回の事業について話合った。地域の中で回転する資金を増やす、地域の人材を有効的に使う、地域のシンボルを作成するなどの意見が出た。

トレーニングには、女性のみならず、地域の成人男性、年配の女性、青年たちや子供まで参加した。5年のトレーニングを続け、地域の女性でも会議やトレーニングで発言ができ、男性とも対等に話合いに参加できるまでになった。

 

現在の地域が抱える問題などに対して、出来る範囲の対処法を考え、その後、参加者の前で披露した。この後、問題と解決方法を探った。

トレーナーのウェイン・エルスワーズがトレーニング参加者に修了証書を授与した。修了証書を受け取ったとき、参加者は嬉しさと満足に満ちていた。

 

ナガルコット村にあるタウタリ小学校への学習教材は、8月11日に実施した。チャングナラヤン村の時と同様、教師へのインタビュー形式によるニーズ調査を実施した。

チャングナラヤン村とナガルコット村の小学校では、必要とされている教材が異なった。学習ポスターを多く希望していたチャングナラヤンに対し、ナガルコットは音楽や体育授業へ力を入れたいとのことだった。

 

教材を運搬した日には、タウタリ小学校の児童110名が参列した。児童全員に、記念として鉛筆が配られた。式典の最後には、ネパール舞踊が披露された。内容は、「日本の支援に感謝している。支援されたものは、大切に利用したい。いつでもナガルコットへの訪問を歓迎する」といったものだった。

 

8月26日、当事業を支援している日本外務省のNGO大使の五月女氏、外務省の藤井氏、在ネパール日本大使館の鳥取氏とウダヤ氏が事業地を訪問した。

NGO大使の五月女氏がチャングナラヤン村の訪問についてスピーチを述べた。ネパール・テレビジョンが、日本からの訪問客を取材していた。

外務省からチャングナラヤン村の小学校長へ学習教材などを手渡した。赤いカバンは、学校試験で上位の点数を取った生徒に記念品として送られる。その他、学習ポスターや教師用の定規セット、辞書セットなどが手渡された。

 

チャングナラヤンVDC(農村開発委員会)委員長から外務省へ感謝のスピーチが述べられた。日本からの支援に感謝し、今後もセンターを持続させるために努力するとのことだった。

チャングナラヤン女性組合による、ネパール舞踊と歌が披露された。『日本からの客を歓迎する。日本のサポートに感謝し、いつでもチャングナラヤンにもどってきて欲しい。』といった内容の歌であった。

 



予想をはるかに超えた約300名の地域住民が、この日の式典に参加した。