フィリピン共和国

熱帯果樹の栽培技術の移転と
アグロフォレストリーへの応用

(支援機関:社団法人 国際農林業協力・交流協会)


2006年2月から3月にかけて、フィリピン共和国ヌエバエシハ州ジェネラルティニオ郡内のシエラマドレ山脈において、マンゴーを中心とする熱帯果樹栽培法、および地域住民による事業計画立案手法の技術移転をおこないました。


地域の様子


上の写真はこの地域の典型的な風景です。標高150メートル前後の丘陵地帯で、ごらんのとおり山には殆ど木がなく、コゴングラスに覆われています。ICAはこの近辺で現地NGOのLUCREとともに、成長の早いキダチヨウラクを中心とした植林作業を行ってきました。ヌエバエシハ州では平野部における稲作が主な産業ですが、ここ山間部でも稲作が行われています。ただし家族当たりの作付面積は小さく、過程消費にも足りない量しか生産できません。右の写真のようにひとたび病気が発生すると、一家は一気に困窮してしまいます。

左の写真に見られるは去年から始まっているアグロフォレストリー活動の成果ですが、表土流出を防ぐための「等高線」が水平になっていません。これでもある程度の効果はありますが、更なる現地指導により、適用を徹底する必要があるといえます。現地ではマンゴーも栽培されています。写真は100年近い樹齢を持つといわれるマンゴーの巨木です。いくつかの家族が果樹園を持っていますが、育苗はおこなわれておらず、新たな苗は全て外部から購入されています。右の写真は村の中央を走る道の坂です。10数年前に不法伐採者が奥地に入るために作った道ですが、以来、手入れがされておらず、現在では雨水による侵食で3輪バイクの通行が困難になっています。今回のICAによる計画立案手法により、まずこの坂道の整備をすることが決定されました。

現地への交通は、拠点となるカバナトゥアン市から近くの町までジプニーと呼ばれる胴長の乗り合いバスで行きます。もともとジープを改造して作られていたのでこのような名前がついたそうです。普段は町からは山道をトライシクルという3輪タクシーで走るのですが、今回は接木演習のための苗木を大量に運び込むため、一回目の訪問ではジプニーを借り切って村の入り口まで無理して運んでもらいました。

村の入り口より先はジプニーもトライシクルも入れないため、写真のように人力、もしくはカラバオ(水牛)の引く橇で資材を運びます。


活動内容


今回、熱帯果樹の専門家として現地に派遣された橋本専門家です。セミナーを始める前に村の様子を視察しました。アグロフォレストリー活動の一環で住民が作った育苗場を見学している様子です。きちんと管理された苗床などに驚いた様子でした。

橋本専門家によるアグロフォレストリー、および育苗に関する一般的な講義を受けた後の接木実習の様子です。橋本氏が日本から持ってきた接木用のナイフを使い作業をおこないます。テフロンテープの代わりに荷造り用のビニールテープを使うなど、彼らが今後実施する際になるべく支出の必要がないように配慮してもらいました。

果樹栽培の全体を学んで欲しいという配慮から、接木済みの苗を鉢から植え替える作業の実習もおこなわれました。深い穴を掘り、表土とコンポストで埋め返し、ガイドを据えるという徹底したやり方です。住民たちは普段はこんな手間隙かけず、「ただ穴掘って苗を置くだけだ」と半信半疑でしたが、橋本専門家にぜひ普段のやり方と平行して見比べて欲しい、二年後には育ち具合に格段の差が出るよといわれ、「それじゃあ」と言っていました。何ごとも新しい方法が定着するには時間がかかります。

果樹栽培技術移転と平行して、住民たちによるコミュニティー開発を可能にするICA手法の講習を開きました。村の発展を分析する手法、どのような活動をおこなうのかコミュニティーで合意を形成する手法、活動の計画を立て役割分担する手法を実際に彼らに体験してもらいました。

参加者の中には赤ちゃん同伴のお母さんも多数いました。自分の子供たちが将来どのような環境に暮らすことになるのかを左右する活動に関するワークショップですから、当然彼女たちも関心があるはずです。活動計画の最後には各作業のカレンダーが作成されます。

更に活動の一環として橋本専門家が以前、ケニアにおける事業で派遣されたときに使用したアンケートを使い、各家庭においてインタビューをおこないました。そこで明らかになったのは、一貫性のない政府の土地政策に翻弄される人々の姿でした。土地の権利の混乱から家族間どころか家族の中でも兄弟間で土地をめぐる争いが頻発し、コミュニティーの結束を弱めているようです。

今回伝えられたことを活用して、是非この子達に住みよいコミュニティーを作ってほしいと思います。


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